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pygmaliondays

夢を見ない人間に未来はない。企業という言葉は創造と同義である。

オプシーボから燃え上がった高額薬剤問題、年明けに薬価抜本改革へ。そもそも薬の値段はどう決まる?

http://www.stockvault.net/data/2013/11/07/150496/thumb16.jpg

 

(注:この内容は2016年10月に「医薬品メーカーが軒並み国内売上減の理由。そもそも薬の値段はどう決まる?」として書いていたものをより薬価改定にフォーカスするよう書き直したものです)

 

今年は、基本的にどの企業も売上減となった。

主に長期収載品の薬価改定に伴う売上減を補うことができなかったことが要因とのことである。

 

大日本住友製薬

大日本住友製薬が10月27日に発表した2017年3月期第2四半期(4月~9月)は、日本事業では戦略3製品の売上は増えたが、薬価改定の影響と長期収載品の売上減を補うには至らず、4.7%の減収、セグメント利益も11.3%の減益となった。

大日本住友・17年3月期第2四半期 国内は4.7%減収 薬価改定と長期品の減少が影響 | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline

 

 

武田薬品

同社の17年3月期第2四半期決算では、日本の医療用医薬品売上は2517億円、前年同期比7.4%減だった。4月に長期収載品を武田テバ薬品に移管したことが主な減収要因。ちなみに移管した長期収載品の前年同期売上は441億円だった。

武田薬品・ウェバー社長 日本市場 GE普及で「革新薬を出さないと意味ない」環境に | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline

 

アステラス製薬

2017年3月期第2四半期(4月~9月)で、日本の売上高は2372億円、前年同期と比べ4.0%減だった。4月の薬価改定で前立腺がん治療薬イクスタンジが市場拡大再算定(25%下げ)を受けたことが主に影響した。グローバル戦略品で業績を牽引する同剤だが売上高は9.9%減となった。

アステラス・17年3月期第2四半期 市場拡大再算定のイクスタンジ9.9%減 新製品立ち上がり緩やか | 国内ニュース | ニュース | ミクスOnline

 

さらに、年明けからは薬価算定の抜本的改革を議論するとの発表もあった。

www.nikkei.com

 

 

一般からすると「薬の値段が下がることで売り上げが減るのはわかるけど、なんでそれが事前に予想できないの?」と思うかもしれない。

これは、今盛んに議論がされている薬価算定(薬の価格を決める決まり)方法の抱える問題と、それを利用していると捉えられても仕方ない製薬会社の姿勢にあると小生は考えている。

 

 

「薬価改定の影響により〜」のことだが、これは「市場拡大再算定」という制度によって薬の値段が下げられた、というケースが多い。

 

まず、お医者さんが診察をして処方箋を書き、薬局でもらっているお薬(=医療用医薬品)は、国民皆保険から一部が負担されている背景などから、

国が定めた「公定薬価」によって値段が決まっていて、2年に1度行われる「薬価改定」によって少しずつ値段が下がっていく仕組みとなっている。(詳しくは後述)

これならば、ある程度想定できる範囲での減収だ。

 

 

しかし、その例外規定として存在するのが、「市場拡大再算定」という制度だ。これは想定より売れすぎた医薬品に対して、薬価改定時に通常の下落幅を大幅に上回る薬価引き下げを行う。


目安としては当初予想された売上規模の2倍以上の売り上げ、かつ売り上げ規模が150億円を超えた薬剤が対象となる。

該当の医薬品については最大で25%引き下げられ、その類似商品も最大で15%引き下げられる。なお、ここでいう引き下げは通常の引き下げに加算して、もう一段引き下げられることを言う。

 

で、当然、業界団体からは猛反発がある。

「企業の開発意欲をそぐ」、「日本の薬価制度への信頼を低下させる」などの批判も上がっているし、

 

そもそも他業界からしてみたら、一生懸命開発した商品が想定よりも売れたということは、それは思っていたよりも人々に評価される良いものが生み出せたということ。それは企業努力の賜物であるわけだし、その果実を横から政府にもぎ取られるのはかわいそうじゃないかと思うのではないだろうか。

 

しかし、だ。医療用医薬品は普通の製品と違うところがいくつかある。

そこを見落とすと理解を間違う。

 

1.薬の代金を支払うのは患者本人だけではなく、国民全員である。

その製品を評価している医師からの説明を受け、納得した上で購入する患者はいいが、国民は社会保険料として一括で支払っていて、その配分までは関知していないし、するのは不可能だ。

なので政府としては、このシステムが破綻しないよう、国民に代わって社会保障費のインとアウト両方の管理を行う必要がある。

値段が高い製品をそのまま放置してバンバン消費されてしまっては、当然国民の負担がバカみたいに増大し、やがては社会保険というシステムの破綻につながりかねない。このために政府は売れすぎた製品の価格を引き下げる権限を持っている。

現在は、2017年度予算の社会保障費の圧縮幅1400億円下振れ視野に調整中であり、財源確保の筆頭にオプジーボなど高額薬剤の薬価臨時引下げを断行することについては政府・与党内のコンセンサスがほぼ得られている。

 

2.そもそも最初の値段つけるときに製薬会社がグレーなことしてる…(?)

断言するのは問題があるのでしない。実際には一生懸命やっている人の方が多い。だけど、製薬会社側が最初の値段を釣り上げてないか?と思われても仕方がないようなことを何度かやってるってのは、事実としてある。

 

これはそもそも医療用医薬品の値段って誰がどう決めてるの?というところを理解しないとわかりづらいと思うので、ここで超ざっくりと説明しようと思う。興味がある人は「中医協」から情報を確認してください。

 

・薬価は厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会中医協)」というところが、法律により決められている算出方法に基づいて価格を算出し、承認することで決定する

・価格の算出方法は、「類似薬があるかどうか」で異なる

 

超基本的な薬価の決め方は以下の通りだ。

f:id:pygmaliondays:20161031121550p:plain

 

説明すると、まず、

・すでに市場に似た薬があればそれと同程度の価格にする(類似薬効比較方式)

・類似薬があっても、類似薬に比べて高い有用性や対象となる疾患が希少疾病であるなどの条件を満たせば、加算して価格をちょっと上げる

 

次に、

・全く類似薬がない場合は、「原価計算方式」と言い、原材料費、製造経費等を積み上げ、それを「薬を使うことが想定される患者数」で割る方法で値段をつけ、 その上で、

 

・ 欧米など外国ですでに販売されている薬に値段をつける際は、欧米での価格を参考に調整する「外国平均価格調整」というので価格が適正なところに落ち着く

 というのが超基本ルールだ。

 

しかし、このシステムには抜け目がある。

 

それは「類似品がない全くの新薬」であり「まだどの国でも販売していない」場合だ。

 

いい例が、まさに今回、高額薬価問題の端を発したオプジーボだろう。

www.sankei.com

 

中医協に提出される薬価原案を作る会議は非公開なので、どのような議論があったかは不明だが、

10月現在の販売価格はアメリカなどで30万円であるのに対して日本では73万円もする。(すでに下げられる方向で話はまとまっています)

 

こんな途方もない値段がついた理由が、まさにこれだ。

・オプジーボは全く新しい機序をもつ新薬だった(類似品がないのでベースとなる価格がなく、「原価計算方式」で価格が決まった)

・最初の承認を、希少疾患(患者数が少ない病気)に向けた薬剤として取得した(原価計算方式では開発費などを「薬を使うことが想定される患者数」で割る方法だ。当然、価格が釣り上がる要因となった)

・日本で最初に価格つけが行われた(外国価格平均との調整がなかった)

 

 

希少疾患で最初の承認を得るってのは他の会社もちらほらやっていることだが、その都度、非難や疑問視の対象となってきた。

 

少し詳しく説明すると、オプジーボには似た薬がなかったので、原価計算方式(原材料費、製造経費等を積み上げ、それを「薬を使うことが想定される患者数」で割る方法)で薬価が算出されたというのは上でも触れている通り。

 

オプジーボは、最初の承認が、患者が年470人と想定される「悪性黒色腫(メラノーマ)」という、比較的市場規模の小さいがんに対する適応だった。

これが、その割とすぐ後に、数万人の患者がいる「肺がん」に適応が拡大されたのである。

つまりは原価を割る母数が、明らかに当初とは大きく乖離しているのだ。

 

ちなみに現行の制度は適応拡大による薬価見直しを行わないため、高い価格で据え置かれるようになっており、これがオプジーボの国内と海外での大きな価格差の原因となっているのだ。

 

当然、看過できないので、中医協では平成30年に予定される次回の薬価改定を待たず、来年2月にも特例的な引き下げを行う方向で議論が進んでいる。

answers.ten-navi.com

 

さすがにこの製品ほど派手なことは他の薬剤ではないが、他社製品もまあ似たような理由などにより、何度か、特例での薬価改定が行われ、そのことにより、予想より減収する企業が出ている場合が散見される。(もちろんそれ以外もあるんだけども)

 

薬価算定方式は何度も細かく修正が行われてはいるが、大きな決まりは長年変わってない。医薬品メーカーは当然、システムを熟知しているはずだ。

その上で原価計算方式を利用するようなやり方で値段をつり上げることを何度も繰り返して、お金をがっぽり儲けておきながら、

これで新薬開発の意欲がそがれるとか言っちゃう医薬品メーカーは、正直、どうなのというのが、個人の印象、、。

 

 

なお、政府もムチばかりではなく「新薬創出・適応外役解消等促進加算」という制度で、全く新しい機序だったり、完治しないと思われていた病気を完治させられるなどの革新的な新薬の開発を促すために、一部の品目について薬価を一定期間(大体15年ほど!)据え置くというアメだって一応は提供している。

正しい努力に対してはきちんと評価するような制度を作る努力はしているので、イノベーション創出のためにも、これからも薬価制度と同じくらい、どんどん改善していくべきものであるし、製薬メーカーとしても、ぜひそう言ったところに対してエネルギーを注いでほしいものだ。

 

これからも、製薬メーカーには正しい熱意を持って、医療業界へ貢献していってくれることを切に願っている。